top of page

くまモンから学ぶ伝道の可能性

この記事は、著者が所属する同志社大学大学院神学研究科の授業「説教学演習1」で2016年6月24日発表した原稿です。

説教の予備練習として自由なトピックで5分のスピーチをしました。

くまモンから学ぶ伝道の可能性

 2か月前の4月14日、16日に熊本県及び大分県で規模の大きな地震が相次いで発生し、今なお余震が続いています。この熊本地震で被災された方々へお慰めを申し上げるとともに、1日も早い復興をお祈りいたします。

 熊本には、くまモンという有名なゆるキャラがいます。 「ゆるキャラ」はアニメと並んで現代の日本が誇る文化といっても過言ではありません。ゆるキャラは、「ゆるいマスコットキャラクター」の略で、地域全般の情報PR、企業・団体のコーポレイト・アイデンティティに使用するマスコットキャラクターのことです。「ゆるキャラ」の原点は、1980年代の地方博覧会ブームで作られたマスコットキャラクターと言われている。その名称は、漫画家でエッセイストのみうらじゅん氏が考案し、2003年にみうら氏とフジサンケイグループの扶桑社により商標登録されている。ゆるキャラブームの火付け役は『国宝・彦根城築城400年祭』(2007年)のイメージキャラクターの「ひこにゃん」である。「くまモン」は、熊本県庁が2010年より「くまもとサプライズ」キャンペーンにおいて展開している熊本県PRマスコットキャラクターであり、2011年の「ゆるキャラグランプリ」の王者である。やんちゃな男の子という設定の彼の誕生日は、2011年の九州新幹線(鹿兒島ルート)全面開通の日と同じ3月12日である。

 彼の特異性の一つは、ゆるキャラでありながら熊本県の地方公務員で「熊本県営業部長」兼「熊本県しあわせ部長」の肩書があり、名刺も持っていることです。天草市出身の脚本家である小山薫堂氏(アカデミー賞外国語映画賞受賞の映画「おくりびと」脚本、TV「料理の鉄人」構成)が新幹線元年事業アドバイザーに就任し、友人であるアートディレクターの水野学氏にデザインを依頼した。依頼はロゴマークのみであったが、水野氏はおまけとしてくまモンを作った。

 くまモン隊を引き連れてメタボな体ながらコミカルで軽快な動きをする彼は、公式なキャラクラーとしてPR活動はもちろん、大阪などで神出鬼没な行動をする。その際は、ブログやツイッター、FacebookやYouTubeを活用する。例えば、それらのメデイアで大阪に出没するらしいという情報を事前に流し、話題性をあらかじめ作り、吉本新喜劇に出演する。なんとも”サプライズ”な画期的な戦略である。もう一点画期的なアイディアは、熊本県の許可があれば、個人または企業でロゴとキャラクターを無料で使用できることである。それにより、熊本のみならず日本のいたるところで、また海外でも(海外については現在使用制限があり)くまモンを見ることができます。

 熊本県においては、もちろんどこへ行っても見かける。例えば、熊本城の正門のに立ち、振り向くと、向かいの高層ビルの一面がくまモンの顔! 県民がくまモンを愛している空気間を感じる。しあわせ部長としての仕事の成果がバッチリ出ている。くまモンのすごいところはを3つにまとめると、1「愛」ーくまモンがみんなをしあわせにしたいと行動し、県民のみならずくまモンに出会った人みんなをしあわせにしていること。2「団結」ー地域がくまモンを通して団結していること。熊本県庁が舵を取り県民全体でまとまろうとしている意気込みが感じられること。3「画期的な戦略」ー先に述べた、今まで誰もやっていない新しく画期的なアイディア。そして、それは愛がベースで金儲けという利潤追求ではありません。結果的に莫大な経済効果を生み出している。

 私たちは神学研究科で学ぶものですが、それぞれが宣教に関わり、伝道方法を考えています。このくまモンの営業部長、しあわせ部長としての働きに学ぶことができます。「愛」クリアしているでしょう。「団結」多分クリアしているでしょう。しかしバランスが崩れることもあるので注意が必要です。「画期的な戦略」、これがポイントです。県庁が依頼し、その県出身者が引き受け、その友人がアイディアを出し、そこで生み出されたものを県民が愛し発信する。この成功モデルから自分の置かれた場所での伝道の形を模索し、実践していきたいと思います。

bottom of page